m-002  デフレ克服のための考察  世界恐慌時のアメリカの経済政策の失敗と成功に学ぶ

特別経済レポート 2003年1月1日著

デフレ克服のための考察
世界恐慌時のアメリカの経済政策の失敗と成功に学ぶ

 1929年のニューヨーク株式の大暴落に始まった世界恐慌は、人類が持ち合わせたあらゆる経済政策の無力さを白日の元にさらしました。金利政策・公共事業による財政出動(1934-36 ルーズベルトによるニューディール政策)や、緊縮・増税による財政規律の立て直し(1930-33 フーバーによる財政均衡政策 および1937-38 ルーズベルトによる財政均衡政策)など、一時的な効果を発現しただけでした。デフレによる税収減は、無駄遣いを控える程度の緊縮では、やっとのことで実現した歳出削減(無駄遣いの削減)以上の税収減となって、翌年返ってくることになりました。そして、このデフレの大波をひかせたのは、第2次大戦による、GDPの4倍以上に匹敵する財政出動とそれによるインフレでした。1933年のGDP560億ドル・1936年の歳入41億ドルから、1945年のGDP2119億ドル・歳入478億ドルまで、この間、GDPは4倍、税収は12倍、GDPに対する年次財政赤字は1936年には6%、1943年には29%まで悪化するものの、1946年には9%まで改善、累積の財政赤字もそれ以上の経済規模の拡大(名目による拡大=インフレ)により、負担は大幅に削減されました。

 さて、現在の日本はというと、表の1番下に現在の時系列をインプットすると、大きな類似性を見ることができます。1997年の橋本政権による消費税の増税をはじめとする財政均衡政策はすぐに崩れ、小渕政権でニューディールに比する財政出動で景気浮揚を図るも、再び、2001年からの小泉政権で緊縮・国民負担増の財政均衡路線を進め、その結果税収の減少は歳出削減を大きく上回ることになりました。構造改革と称して、歳出削減どころか、今年度の歳出80兆円に対して来年度は補正を含めると86兆円、増えてしまっています。それに対して歳入のほうは50兆円から44兆円に大幅に減少してしまいました。そして、毎年使う予算の半分は借金ということになってしまいました。デフレが進行する限り、歳出削減以上の歳入の削減に見舞われつづけるのです。

 たとえば、売上が減少し、赤字に陥った企業は、赤字幅が経費削減やリストラでまかなえる範囲であればそれでもいいでしょうが、それ以上の売上の減少になれば、打つ手は、経費削減やリストラではなく、売上を増やす以外に方法はないのです。今の日本は、歳出を半分にしないと、財政が均衡しない。いや、来年度は更に歳入が減少するわけですから、半分以下にしなくてはならないのです。つまり、政治も行政も公共事業もすべて半分以下にしなくてはならない。これは、無理な話です。それでは、売上を増やすのにはどうすればよいのでしょうか。魚屋さんなら、価格を倍にすれば売上は倍になるのでしょうか。こんなことは子供でもわかります。そんなことをすれば、誰も買いに来てくれなくなってしまう。逆に売上は間違いなく減ってしまうでしょう。そして、こんな誰にでもわかるような間違いを国家はやろうとしています。歳入を増やすため、増税しようとしているのです。よく、このままの財政状態では、消費税を30%にしなくてはならないなどと言いますが、消費税を30%にしても、同じだけ国民が消費を続けると思っているのです。本当に馬鹿です。消費税を30%にしたら、みんな消費を半減させるでしょう。このままでは経営が成り立たないから、そうだ、全商品を倍の価格に値上げすれば、大もうけだ!・・・・こんなことを経営難のダイエーがやったら、明日にもダイエーは倒産するでしょう。

 よく、一時的に痛みを伴うが必ずよくなるといいますが、このやり方はデフレ環境下ではまったく通用しないことは、歴史がきちんと証明しています。むしろ一時的に借金は増えるが、経済規模の拡大(名目=インフレ)によって、財政赤字の負担は減じられ、経済は5年で元の状態に戻るでしょう。2003年以降、戦争による財政出動ではない、違う手法でGDPの4倍規模の財政出動ができるか、ここにかかっているといって間違いないでしょう。補正予算の議論など、そんな規模の小さな話をしている場合ではないのです。規模はGDPの4倍!そうしなければ、この国の経済は、無駄遣いの構造改革の話をしているうちに崩壊してしまうでしょう。崩壊した後の復旧にかかる費用は、GDPの4倍ではとても納まりません。

 ふざけた特殊法人や役人の話は経済復活とは関係ありません。構造改革は構造改革担当大臣に任せ、デフレ脱却を国家最重要課題とするべきです。地価が倍に戻っても、バブル時の半分にもならないのです。資産デフレによる国民の損失は、道路公団の無駄遣いの比ではないのです。6000万円で買ったマイホームが2000万円になってしまったのですから、これはもう家を買うのもギャンブルみたいな、そんな国が先進国と言えるのでしょうか。

 財務省の役人がノーパンしゃぶしゃぶに行かなくなっても、外務省の役人が機密費の無駄使いを止めても、デフレの克服とは関係ありません。構造改革はどうぞやってください。ふざけた役人を懲らしめるのも結構。だけど、それとデフレ脱却は全く関係ない話です。構造改革をすれば成長するというのはまったくの嘘です。ITを導入すれば成長するというのもまったく同じ類の話です。竹中大臣が、気が狂ったように、IT、ITと叫んでいました。IT革命はだいぶ進みましたがデフレは止まっていません。デフレの治療にまったく関係のない、効果のない治療を続ける医者はやっぱり藪医者と言わざるを得ない。そろそろ、我々国民の側も、構造改革などという話を卒業しなくては、本当に大変な事態になってしまいます。

 小渕さんが100兆円の財政出動(GDPの20%)をして、景気が浮揚しなかったのだから、今度はまた、緊縮財政と増税で、その挙句に、構造改革などという、デフレ脱却には何の効果もない改革を旗印にしても、結局は同じことの繰り返しです。ところが、経済評論家も、アナリストも、コンサルタントも、企業経営者までも、構造改革の必要性を、経済成長の切り札のように主張する。小渕さんの100兆円では足りなかったのだと主張する論客は残念ながら一人もいないのです。世界恐慌時のアメリカの経済指標を見ても、GDPの10%や20%の財政出動ではデフレから脱却できないことは明らかです。当時の560億ドルのGDPに対して、累積の財政赤字は2200億ドルに達しました。つまり、GDPの4倍の借金を国家が背負って、それによって、デフレの地獄から脱したのです。しつこいようですが、GDPの400%、つまり2000兆円規模の財政出動が必要なのです。この10年間に費やされた財政は、国と地方を合わせておよそ800兆円、少なくとも、あと1000兆円の財政が出動されなければ、このデフレの地獄は終わりません。そしてデフレが進行すればするほど、失われる国民資産は大きくなり、脱却のための支出も膨らんでいきます。来年度の財政赤字は約40兆円、毎年40兆円ずつ、小出しにした場合、1000兆円に達するまでに25年もかかってしまう。そして、40兆円の赤字の中身は、すべて金利に回ってしまうことになるでしょう。小出しでは効果はあがりません。

 竹中大臣も、銀行や保険会社のシンクタンクのよくテレビに出ているアナリストもみんな、世界恐慌を特別なものとして、研究対象にしていない。資本主義が陥るロングスパンにおけるデフレ・恐慌サイクルの存在を否定しているのです。通常の好不況の景気循環サイクルに伴う不況を風邪だとすると、デフレ・恐慌は、ガンです。ガンの治療に、風邪の治療薬を使っても全く効果はない。増してや、ガンにかかった人に、早寝・早起き、禁煙・禁酒などの生活構造改革を進めるのが名医の治療法なのかと考えれば、小泉さん、竹中さんがやっている、構造改革が、早寝・早起き、禁煙・禁酒などの生活構造改革にしか過ぎないことは明らかなはずです。デフレはガンです。ガンの治療には、綱紀粛正の早寝・早起型の構造改革など全く意味がないのです。ガンの摘出、大量の投薬をしなくては、死にいたることになります。副作用など恐れている場合ではないのです。

 今すぐ、国家経済緊急事態宣言を発令し、1000兆円規模の財政出動を実施するべきです。アメリカは、GDPの4倍の赤字を子や孫には付回したりしていない。今のデフレを通常化してしまうほうが、ずっと子や孫に大きな負担を残すことになるのです。
 もちろん1000兆円の財政を今までの公共事業や銀行救済に回すべきではない。国民に直接使ってもらうお金として流通させる必要があるのです。赤ん坊も大人も一律1000万円のお金を使えるように流通させるシステムを作れば、1億2000万人で1200兆円になる。国民一人あたり1000万円にあたるだけの財政出動を戦争や金融パニックでドサクサ紛れに使うのではなく、全国民に公平に1000万円ずつのお金を使う権利を与えるのです。世界経済に与える影響も、非難もすべて承知した上での提言です。このまま日本経済がクラッシュするようなことになれば、日本に投資していた投資家は全損を被ることになるのですから。

 こんな夢物語のような、アンリアルなことは不可能だと言われるかもしれないが、理解可能なことだけをいくら繰り返しても悪化の一途をたどっているのです。世界恐慌時のアメリカが取った戦略は戦争による財政出動に伴うインフレ誘導、デフレからの脱却だったのですから、私が提言している内容のほうが、はるかにリアリティがあり、損失も少なく、戦争と同じ効果(デフレからの脱却)を発揮できるのです。
2003年元旦  比金義明著
 
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